くじら博士の大隅清治先生、東京大学大学院博士課程、水産庁遠洋水産研究所所長、(財)日本鯨類研究所専務理事を歴任され、くじらと40年以上関り続けた先生の著書「クジラのはなし」の最初の話が「クジラとサカナのちがい」です。また我が会の元事務局長である石川創先生、元南極海鯨類調査船団長、元下関市鯨類研究室室長の著書「クジラをめぐる冒険」にも同様の話があります。それほどクジラがサカナと間違えられるのも無理はないということから、解説が始まります。すし屋で出る大きな湯飲みに、様々な種類の魚の漢字が書かれています。難しい漢字もあり、なかなか読むのに苦労します。その中に「鯨」が含まれています。その字の示す如く、古来、中国ではくじらは「京」という大きな「魚」と認識されていたのです。日本では奈良時代から、くじらは「いさな」と呼ばれていました。一般的には勇ましい魚という意味だとされますが、朝鮮語起源説でいけば「大きな魚」という意味があります。

大隅先生の説明では生物学の祖とされるアリストテレスは2400年前に、クジラは血液が温かく、肺があって空気呼吸をし、胎生で、乳で子供を育てると指摘しています。これらの特徴はいずれも魚類にはなく、哺乳類がもつ特徴です。
ただし、当時の分類学では哺乳類に含まれず、クジラが哺乳類として分類されるようになったのは250年前からということです。

石川先生の解説を要約すると
(1)サカナは水中で息ができるが、クジラはできない。
サカナにはエラという器官があり、水中に溶けている酸素を血液に取りこむ働きがあります。クジラには胸の中に肺があり空気中の酸素を血液に取りこむことが出来ます。海を泳ぐクジラの姿を見ると、まるで水中で息ができるように見えますが正確には「息を我慢して」潜っているのです。私たちはクジラが頭の上から噴水のように水をふく絵を見たことがありますが、正確には、新鮮な酸素を取り込むために、肺にある温かく湿った息をものすごい勢いで大量に出しているのです。それが気温や圧力の変化で白い霧状になっているのです。
(2)サカナは卵を産むが、クジラは赤ちゃんを産み、お乳で育てる。
クジラは私たちと同じ哺乳類ですから卵でなく赤ちゃんを産みます。哺乳類の「ほ乳」とは「乳を与える」という意味です。サカナは沢山の卵を産みます。
(3)サカナの体温は周囲の温度で変わるが、クジラの体温は一定。
哺乳類と魚類の大きな違いは体温です。クジラは哺乳類ですから体温は一定なのですが、陸上の哺乳類と比べて海の中で体温を保つのは簡単ではありません。それは水中では熱の伝わり方が速いからです。陸上動物は毛皮等で体温を保ちますが、クジラは皮膚の下に厚い脂肪の層があることで体温を保っているのです。