「くじら百話」では我が会、下関くじら食文化を守る会が発行した過去の様々な記録を後世に残すための掘り起こしも行っています。現在は日本近海での商業捕鯨が確立し、くじら文化よりも鯨肉の消費拡大に力が入れられているように思います。これは我が会の存続にも関わる問題ですが、会長の仕事として忘れてはならない保存すべき情報を整理しお伝えします。

1999(平成11)年秋、伝統の捕鯨文化を21世紀に伝えようと、下関市あるかぽーと岸壁から母船日新丸を含む5隻からなる南氷洋鯨類捕獲調査船団が出港しました。下関くじら食文化を守る会は前年に続き、船団出港式の前夜祭で第2回「くじら供養祭」を開催、水産庁国際課漁業交渉官・小松正之氏の記念講演やくじら料理を囲んでの交流会を行いました。南氷洋調査は(財)日本鯨類研究所が実施、共同船舶(株)が船団を運航・管理する政府委託事業で南極海鯨類資源の科学的研究のため1987(昭和62)年にスタートしました。蓄積データーは資源の持続的利用による捕鯨の正当性・必要性を主張する我が国の科学的アプローチを支えています。

くじら供養祭に続いて行われた水産庁・小松正之氏の講演から紹介します。
演題は「最近の鯨を取り巻く情勢」について。
下関市の新水族館(2001年、春開館)に展示されるノルウェーからのシロナガスクジラ骨格標本に触れた小松氏は「かっての捕鯨大国・日本に現在、こうした骨格標本が一体もないのは疑問。商業捕鯨に奔走した結果だと鋭く指摘した。その上でこのたびノルウェーとの交渉で史上最大の南氷洋の標本を要求したが、結果的には若干小さい北太平洋になった」と話しました。

最近の捕鯨交渉の動静について「南氷洋は捕獲に向かって進むだけの段階に至っているが、外国からの政治的圧力で表面的に進んでいない。鯨を殺すことが即、罪悪という倫理を彼らは持ち出すが、他の動物であっても殺すのに罪悪感を持たない人はいないし、そもそも国際捕鯨条約に倫理の言葉はない」と発言。

2000年4月にナイロビで開かれるワシントン条約締結国会議で「北太平洋と南氷洋のミンク鯨に加え、コク鯨についてアメリカは資源が回復したため健全な種であることを自ら認めている。このことで今後IWCを揺さぶる。
小松氏は「生き物を恵み与えられる範囲で利用するには理性と理解力、経験がいる。確固たる信念を永久末代まで伝えていくには、捕鯨を知る世代から若い世代への引き渡しが必要。下関市を基点にして日本全国、世界へ発信してほしい。
国内のまとまりが外交の原点。これまでの力にプラスアルファを」と述べ、講演を締めくくりました。